臓器くじ(ぞうきくじ、英: survival lottery)は、哲学者(倫理学者)のジョン・ハリスが提案した思考実験。日本語圏では「サバイバル・ロッタリー」とカタカナ表記されることも多い。
「人を殺してそれより多くの人を助けるのはよいことだろうか?」という問題について考えるための思考実験で、ハリスは功利主義の観点からこの思考実験を検討した。
内容
「臓器くじ」は以下のような社会制度を指す。
公平なくじで健康な人をランダムに一人選び、殺す。
その人の臓器を全て取り出し、臓器移植が必要な人々に配る。臓器くじによって、くじに当たった一人は死ぬが、その代わりに臓器移植を必要としていた複数人が助かる。このような行為が倫理的に許されるだろうか、という問いかけである。
ただし問題を簡単にするため、次のような仮定を置く(これらは必ずしもハリスが明記したものではない)。
くじにひいきなどの不正行為が起こる余地はない。
移植技術は完璧である。手術は絶対に失敗せず、適合性などの問題も解決されている。
人を殺す以外に臓器を得る手段がない。死体移植や人工臓器は何らかの理由で(たとえば成功率が低いなど)使えない。議論
事故にあって死ぬことよりも積極的に殺すことのほうが罪が重い。
反論:臓器が必要な人をそのまま死なせるのは見殺しにするのと同じことであって、移植しようがしまいが殺すことに変わりないのではないか。
臓器が必要な人をそのまま死なせることは消極的に殺すことであり、健康な人から臓器をとるのは積極的に殺すことであり、その意味は当然異なる。
反論:過程がどうであれ、最終的に多数の命を救う事に比べれば、一人の犠牲に対する意味の違いなどは大きく取り上げることではないのではないか。
いつ臓器を奪われるか分からない状況に怯えることになる。
反論:多数の人から無作為に選ばれるならば病気や事故に遭って死ぬ確率がごくわずかに増えるのと同じことであり…