10月からTOKYO MXなどで放送中のガールズバンドアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」が、番組公式ツイッターフォロワー数が24万人を超えるなど、高い人気を誇っている。同アニメとコラボレーション中の楽器店・島村楽器の担当者によると、アニメの影響で作中の主人公・後藤ひとりのモデルギター「Epiphone Les Paul Custom EB」(エピフォンLP)の11月売り上げが10月に対して「400%以上の伸び率」となっているという。担当者は、社会現象を起こしたガールズバンドアニメの“金字塔”「けいおん!」に続く、令和のバンドブーム到来の可能性について言及した。 島村楽器では、エピフォンLPの問い合わせ時に「アニメをみて弾いてみたくなりました」と話す初心者の声が多く、既存のギターユーザーからの問い合わせも一定数あるという。担当者は「主人公が使用している黒いレスポールは、ギターを弾く人がいつか使ってみたいと感じる代表的なギターのひとつですので、アニメをみている内にかっこいいと感じられているのかもしれません」と推測した。 アニメの原作は「まんがタイムきららMAX」(芳文社)で連載中の、はまじあき氏による4コマ漫画。ギターを愛する極度の人見知りで陰キャな少女“ぼっちちゃん”こと主人公の後藤ひとりが、高校生のある日、バンドでドラムをやっている伊地知虹夏に声をかけられたことをきっかけに、日常が少しずつ変わっていく物語が描かれる。後藤はバンドや人前で演奏するのは苦手だが、中学時代毎日6時間ギターを弾いていたことからその腕前は本物。所属する「結束バンド」では、リードギターを担当している。 ガールズバンドアニメの代表作といえば、2009年にテレビアニメ1期が放送され、11年には映画も公開された「けいおん!」がある。当時の島村楽器では、メインキャラクター・秋山澪モデルの左利き用のベース、中野梓が使用するギター・ムスタングなど、もともと店頭にあまり展示されていなかったギターの問い合わせが増加し、展示商品構成に影響が出るほどだったという。「他にも女性のギター購入構成比が上がったり(5:5以上)、ストラップ・ケースなど可愛い柄ものが売れたりしました」とブームを振り返った。 アニメ「けいおん!」が大ヒットした後、衝動的に楽器を購入し、バンド活動に挑戦した視聴者は決して少なくない。担当者は「現時点でバンドブームが起きているとは言えないと思います。売れている(反応がある)のはエレキギターとその周辺機材であり、ベースやドラムはあまり変わっていません」と説明。一方で「昔のギターヒーロー像は、良い意味で自己顕示欲の塊だったと思いますが、『ぼっち・ざ・ろっく!』の主人公は陰キャと言う立ち位置で新しいギターヒーローの形を見せてくれているとすれば、いままでとは違う形でのバンドブームが起こるかもしれません」と期待を寄せた。 実際に、コロナ禍でギターヒーロー像に変化が生じていると担当者は指摘する。バンド活動が困難になり、ギター購入後の楽しみ方は多様化した。「YouTube投稿や楽曲制作などを中心に活動する巣ごもりギタリストが増えた分、憧れの対象にも変化がみられます」と説明。「けいおん!」の主人公・平沢唯は天然でほんわかした雰囲気で、誰からも愛されるようなフレンドリーな性格だ。一方、後藤ひとりは、会話の頭に必ず「あっ」と言ってしまうほど、ひきこもり一歩手前だった「陰キャのギタリスト」。結束バンドに入るまで、ギターを独学で練習した。 後藤ひとりの姿に憧れてか、島村楽器が提供しているギター初心者サポート動画配信サービス「ギターセンパイ」の申し込みが通常月の倍以上に増加しているという。キャラクターの励ましを受けながら、アニメの主題歌「青春コンプレックス」にあわせてギター練習ができる。 担当者は「かつてのようなバンドブームが再燃することもうれしく感じる一方で、ギターを始める方が増えれば増えるほど『今より挫折する方を減らしたい』と言う思いも強くなります。今回、アニメの反響で増えたギタリストの皆さんのトータルサポートを『ギターセンパイ』でできればと考えています」と願いを語った。(よろず~ニュース・松田 和城)