この頃の江戸町人の話題といえば、大名屋敷や大商人の屋敷から鮮やかな手口で大金を盗み出す泥棒「兎小僧ちん吉」と、吉原で一番の人気を誇る花魁「おチャイ」のことであった。
兎小僧ちん吉は盗んだ金を貧しい者に分け与える義賊として名高く、おチャイは大きな呉服屋の当主「観音屋蛤左右衛門」(かんのんや はまざえもん)から何度も身請け話をもらうもその度に断っていると有名だった。
袖にされ続けて思い詰めた蛤左衛門は、「目明しの豚吉」(めあかしのぶたきち)を雇いおチャイの身辺を探らせた結果、「おチャイが同じうさぎ族のよしみで兎小僧ちん吉を匿っている」という大きな秘密を手に入れる。
登楼した蛤左衛門は、人払いをしてこの秘密をおチャイに突きつけ「このことが公儀にばれたらお前も死罪となるぞ。それが嫌ならわしの身請けを受けろ」と迫るのだった…