私は「きっと昨日、井戸からこっちを見ていたやつがやったに違いない!」と怒り、井戸に近づいて大きな声で「こらー!」と声を上げました。
井戸の中には大きな顔がありました。
肌は茶焦げていて、目は離れており、口はおちょぼ口のようだったと思います。
その顔がこちらを見て、「ぼーん。」と鐘の音のような声を発しました。
私はそのまま叫び声をあげ、そのとき家にいた母に泣きつきました。
母は泣きじゃくる私をなだめながら「お墓はきっと野良犬か何かが掘り返してしまったのよ」と慰めてくれました。ですが、その後の大きな顔に関しては「気のせい」だと一蹴して何度説明しても信じてはくれませんでした。
今にして思えば顔に見えたものも、母が言う通りに井戸底に積もった落ち葉などがそう見えたのかもしれません。
しかし、「ぼーん。」という音まで、そこまで勘違いで聞こえるものなのでしょうか?
私はそれ以来一度も裏庭には行っていません。
氏神様に近い側にお墓を作ったことが良くないことだったのでしょうか?
どなたか同じように古井戸であの顔を見たことがある人はいませんか?